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2020年イグノーベル賞 各受賞部門まとめ

イグノーベル賞は、ノーベル賞のパロディーとして1991年に創設され、「人を笑わせ、考えさせる業績」に対して毎年贈られる賞である。
なお、日本は、14年連続で受賞しており、イグノーベル賞の常勝国である。
(1991年,1993年,1994,1998年,2000年,2001年,2006年を除いて毎年受賞)

そして、受賞者には賞状が贈られるが、賞金は原則としてゼロである。

例外として、2020年の受賞者には、「何か重要っぽいもの(紙製の謎の工作物)」と「賞金10兆ジンバブエドル」が贈られた。
なお、ジンバブエ・ドルは2015年に通貨として廃止されているため、今は実質的に「ただの紙クズ」である。

ジンバブエ・ドル
Image by wikipedia

さて、2020年のイグノーベル賞についてだが、コロナのパンデミックのため、オンラインで授賞式が開かれた。
授賞式の様子は、9月18日にYoutubeでライブ中継された。

イグノーベル賞の授賞式
Movie by youtube

そして、2020年の受賞者には、やはり日本人の受賞(音響部門)が含まれていた。各部門の概要は以下の通り。

◆音響学賞:
「機密性の高い部屋をヘリウムを多く含んだ空気で充満させ、メスのヨウスコウワニに鳴くように仕向けた研究」

[受賞論文]

音響学賞を受賞したのは、京都大霊長類研究所の西村剛准教授を含む日本・アメリカ・オーストリア・スイス・スウェーデンの研究チーム。
人間がヘリウムガスを吸って声が高くなることは、声道で共鳴が起きていることに起因する。
そこで、研究チームは、人間の発声と同じように、ワニの声道でも共鳴が起きているのかを調べた。

難しかった点は、「どうやってワニにヘリウムを吸わせるか?」だった。

◆心理学賞:
「眉毛を観察することでナルシストを特定する方法の考案」

[受賞論文]

受賞者らは、大学生39人の顔写真を対象に、その表情の「ナルシスト度合い」を採点してもらう調査を行った。
その結果、ナルシストであるという判断材料は、「眉毛」に依存していると結論付けた。

なお、授賞式では、受賞者自身がナルシストの容疑にかけられていた

◆平和賞:
「インド・パキスタンの両国の政府外交官が、夜中にこっそりと互いの玄関の呼び鈴をピンポンダッシュして逃げる応酬を展開したこと」

[受賞ニュース]

インドとパキスタンの間の外交には、午前3時の真夜中にドアベルを鳴らしてピンポンダッシュで逃げる嫌がらせも含まれる
平和賞は、インドとパキスタンの政府に贈られた。

◆物理学賞:
「高周波にさらされた時、生きているミミズの形態がどのように変化するのか」

[受賞論文]

受賞者らは、「ミミズを振動させたらどうなるのか」という疑問に思い、実際にやってみた。
その結果、「ミミズの体の振動が、水の水面の波紋にとても良く似ている」ことがわかった。
また、「ミミズの体がどれぐらい伸びるのか」も推定できた。
この研究は、ミミズの神経パルスがどのように到達するのかを理解するために役立つとのこと。

しかし、受賞者らは、初めはこの研究が何のために役立つのかを考えるのに苦労したとのこと

◆経済学賞:
「各国の国民所得の格差とキスの平均回数の関係性」

[受賞論文]

良いキスには、2つの要素があり、「感覚」と「性的興奮をもたらすテクニック」である。
女性は男性に比べて、良いキスを「感覚」で評価する傾向にあり、息が臭くないことも重要な要素であることがわかった。

また、国の豊かさがフレンチキスの頻度の文化的違いを表すことがわかった。
そして、経済格差の大きい国の方が、国民所得が均衡な国に比べて、キスの回数が多い傾向にあるとのこと。

◆経営学賞:
「中国広西チワン族自治区の5名のプロの殺し屋が以下の方法で殺人契約を結んでいたこと」

クライアントから依頼金を受け取った殺し屋Aは、その仕事を殺し屋Bに委託した。
そして、殺し屋Bは殺し屋Cへ、殺し屋Cは殺し屋Dへ、殺し屋Dは殺し屋Eへ、殺し屋Eは殺し屋Fへ委託した、
このように下請けへの委託とピンハネを繰り返すことにより、報酬はより少なくなっていった。
しかし結果として、殺し屋Fは暗殺に失敗し、殺人は行われなかった。

経営学賞は、中国の殺し屋A~Fに贈られた。しかし殺し屋A~Fは、服役中のため、授賞式に出席できなかった

◆昆虫学賞:
「多くの昆虫学者がクモを恐れているという証拠」

[受賞論文]

受賞者は、アメリカの昆虫学者リチャード・ヴェッターさん。
彼は、昆虫学者の同僚が「実はクモが怖いんだ」と告白したことが不思議だった。
そこで、昆虫学者を対象にアンケート調査を行った。

その結果、昆虫の足の数が多くなるというだけで、恐怖に大きな違いをもたらすことがわかった。

◆医学賞:
「他人の咀嚼(そしゃく)音を苦痛に感じる症状に対する医学的診断」

[受賞論文]

飲み物をすする音や唇を鳴らす音などの不快音は、重度の精神疾患を引き起こすことがある。
この精神疾患は、「ミソフォニア」と呼ばれている。
ミソフォニア患者は、うつ状態になったり、失業したり、人間関係にも影響が出る。

受賞者らは、ミソフォニア患者の幼少期の記憶まで遡る聞き取り調査を行った。そして、その原因となる脳の回路を特定した。
また、受賞者らは、音や映画を使った治療法も開発した。

なお、受賞者は、りんごをかじってクチャクチャと音を立てて食べながら授賞式に出席していた

◆医療教育賞:
「政治家は、新型コロナウイルスのパンデミックを利用して、科学者や医者よりも人の生死に直接的な影響をもたらすことができると世界に知らしめたこと」

2020年に世界中でパンデミックとなっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、「政治家は科学者や医師よりも人の生死に直接的な影響を与えることができる」ということを実証したとして、以下の政治家が受賞した。

  • アメリカ(トランプ大統領)
  • ブラジル(ボルソナーロ大統領)
  • イギリス(ジョンソン首相)
  • ロシア(プーチン大統領)
  • インド(モディ首相)
  • メキシコ(オブラドール大統領)
  • トルコ(エルドアン大統領)
  • トルクメニスタン(ベルディムハメドフ大統領)

なお、残念ながら、受賞者らの出席は叶わなかった

◆材料科学賞:
「凍らせた人糞で作ったナイフでは上手く切れないことの実証」

[受賞論文]

受賞者らは、実際に凍らせた人糞を用いてナイフを作製し、豚肉のカットを試みた。
その結果、ナイフが使い物にならないことを実証した。

受賞者らは、この実証には「何か成功のニオイがする」とコメントしている。

これらの研究は、経済的に価値の低い研究なのかもしれないが、
何よりも知的好奇心が刺激されるという意味で単純に面白い。

いくつかの受賞部門は、オモシロ実験系に特化している性質もあるため、
そのうちYoutuberあたりが受賞しそうな予感がするのは気のせいだろうか。

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